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「ん……っ」
トロンとした結花の顔は、さっきまでの子供っぽさはなく、完全に『大人の女性』の顔になっていた。
「…………いじわる」
短いキスの後、名残惜しそうな目をして言った彼女の一言に、琉は苦笑した。
「……俺はいじわるだけど、そう言う結花は――“ずるい”な?」
「ずるい?」
「ずるいよ」
「何が?」
小首を傾げる結花。
それを見て琉は微笑み、今度は彼女の頭を優しく撫でた。
「わっ…」
「…教えないよ」
「え?」
「――さ、こんな所でぼうっとしてても何もならない。
……取り敢えず教会へ」
「ちょっ……それって――」
結花の声を背に、琉はスタスタと歩いて行く。
彼女はぐっと詰まったものの、はあと溜め息を吐き、ぱたぱたと彼の後を追って行った。
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