無貌の保護者

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「あ、まだ身体は動かさないでね。骨折はしてないけど打撲が酷いから。お腹も空いてるでしょ? 点滴じゃお腹は膨れないからね」  彼女はそう言って笑う。言われて僕は自分の暴力的な空腹感に気付いた。 「確かに、酷い空腹だ」  確かに、と彼女は僕の言葉を確認するように呟く。「やけに変わった喋り方をするのね、まだ若いのに。まあいいわ。直ぐに食事を持ってくるから、良い子で待っててね」  良い子? その明らかな子供扱いに、僕が非難の声を挙げる前に彼女は部屋を出て行った。  
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