無貌の保護者

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 彼女が出て行った後の部屋に、僕はゆっくりと視線をめぐらした。平凡な病院の、平凡な病室といった印象の一室。開かれた飾り気のないカーテンに、大きな窓。日当たりは良い。窓の外に見える樹木の高さから、どうやらここが二階だと判る。  僕は病人によく見るような服を着せられていて、腕には点滴の針、脚や首、頭にも包帯が巻かれているようだった。  僕が寝ているベッドは簡素なパイプベッドだ。シーツはわざとらしいほど真っ白で、漂白剤らしき臭いが鼻についた。天井は白く、壁も白い。  ここはまるで「病院」という概念を物理的に具現化したような、そんな象徴的病院らしかった。  
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