無貌の保護者

12/39
前へ
/111ページ
次へ
「今度は完全に目が覚めたらしいな」 と見知らぬ男性が病室に入ってくる。口調は軽く、服装は更に軽い。白衣を着ているので医者だとは思うのだが、前のボタンは全て外しているし、襟は立っていた。  また、ちらと覗くインナーも酷い。黒地に真っ赤な血痕をプリントしたシャツに、脚を巻くようなベルトが幾重にも重なったロングパンツ。顔は三十代半ばのように見えるが、ワックスで逆立てた髪のせいで、僕には自信が持てなかった。 「俺の服装か? 気にするなよ。こんな格好でも医者は医者だ。君の担当医の『福島』だ。宜しく」 と男は白い歯をニッと見せ握手を求めてくる。僕は何も言えず、ただ求められた握手に応える事しか出来なかった。  
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加