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判らない、と僕は答えた。それ以外の言葉は思い浮かびもしなかった。
「判らない? それは答えたくないという意味か?」 と彼の表情が険しくなる。
「違うんです」 と僕は慌てて弁解した。「言いづらいんだけど、本当に自分の名前が思い出せないんです。何て言うのか…そう、記憶喪失かもしれない」
「記憶喪失? ハッ、本気か? なら君は、何故自分がこのベッドに寝ているのかも判らないと?」
「つまり、そういう事らしいです」
……彼は何も言わない。ただ黙って僕を見つめ、溜息を吐く。
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