無貌の保護者

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「……なんとなく“厄介事”にはなりそうな気はしたがね、まさか記憶喪失なんてな。ハァ、まあいい。これからの事は後から話そう」  ――その時、病室のドアがノックされ「失礼します」 という声の後にドアが開かれる。田村という看護師だ。彼女が配膳用トレーに病院食(お世辞にも美味しそうには見えない)を載せ、病室に入ってきた。 「あら、福島先生。いらっしゃったんですか」 「……居ちゃ悪いか、俺は彼の主治医だ。病室に居たって不都合はないだろう」  僕は彼等のそんなやり取りを黙って見ていた。するとどうだろう、とても奇妙な感覚が頭に湧いてきたのだ。とても奇妙とは言ったものの、それをどう上手く表現すればいいのか、僕には判らない。ただ、目の前で起きている光景と交わされている会話が、とてもちぐはぐな気がしたのだ。異質なズレ、ギャップ。  
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