無貌の保護者

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 福島先生は黙って頭を掻いていた。空気が重い。僕は「すいません」 としか謝れなかった。しかしこの出来事が、これからの僕の行き先を決める事になるとは、その時の僕には夢にも思わなかった……。  ――それから数日間、僕は軟禁のような状態にあった。名前も判らない。住所も、怪我の理由さえ判らない男を、ふらふらと出歩かせる訳にはいかないらしい。  僕は浜辺に打ち上げられていたらしく、最初は自殺未遂者だと思われていたのよ、と田村さんから聞いた。僕には覚えがない。まあ名前も思い出せないのだ、たとえ自殺をはかったって、その理由なんて思い出せる訳もない。  
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