無貌の保護者

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 ――記憶の無い僕のそんな日常に変化が訪れたのは突然だった。いつもの飄々とした調子で病室を訪れた福島先生が連れてきた、ある“人物”によって、見せ掛けの日常は脆くも崩れたのだ。 「やあ、調子はどうだい?」  彼はふらりと病室に寄っては、毎度同じ台詞を僕に投げかける。僕もまた、同じようも答えるしかなかった。 「身体の調子は悪くないです。意識もハッキリしている。記憶以外に、悪いところは一つもない」 「ん、まるでテープレコーダーと話しているようだ。昨日も同じ台詞を聴いた気がするよ」 「お互い様、だと思いますよ」  
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