無貌の保護者

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 何故だろうか、僕はこのノー・フェイスの視線、いや、存在自体に不安を感じていた。漠然とした恐怖と混乱も、……地平線しか見えない草原に置いてけぼりにされたような、当たりどころの無い不安。 「宜しく」 と漸くノー・フェイスは左手を差し出し、握手を求めてきた。僕は慣れない左手の握手に違和感を覚えながらも(まるで粘土細工としているような握手だ)応えた。 「実はコイツに君の話をしたら妙に食い付いてきてね。君の記憶にも何か刺激になればと思って連れてきたんだ」 と福島先生はノー・フェイスの肩を叩きながら言った。  
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