無貌の保護者

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 ノー・フェイスが僕に詰め寄る。彼(あるいは彼女)の顔が僕の鼻先まで数センチのところまで近付き、止まる。いつの間にか手首まで握られていた。冷たくも、暖かくもない手だ。 「いきなりそんな事を言われても…」  言いよどむ。自分にだって訳が判らないんだ。目が覚めたら記憶が無く、代わりに有ったものは、根拠もないのに(だが確信はあった)他人の嘘が見抜けるという能力。説明のしようがない。 「自分でも何故、他人の嘘が見破れるのを判らないと言うのか?」 とノー・フェイスが訊ねてくる。  
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