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「そうです。自分の事なのに判らない。ただ、嘘をついていたり、隠し事をしている人間を見ると違和感を覚えるんです。その違和感の正体が何なのかは判らない。説明が出来ないんです」
……ノー・フェイスは暫く僕の顔を真正面から見据えていたが、ゆっくりと離れ、思案するように顎に手を添え、黙り込んだ。
僕はその間、目の前に佇む漠然とした人物の輪郭を捉えようと努力した。細部からひとつずつだ。
髪色は黒、髪質は柔らかそうで、長さは襟足が長く、横と前髪は耳、眉を隠す程度まで伸びている。瞳の色素が薄く、もしかしたら西洋人の血が幾らか混ざっているのかもしれない。
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