無貌の保護者

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 皆が僕を責めているらしかった。慰めてもいるし、貶してもいる。励ましてくれている者もいる。  ふと辺りを見回すと、皆が僕を観ている。のっぺらぼうの群れ。  僕はこれが夢だと思った。夢じゃなければ、僕は狂っているのだろう。あるいは、これから狂ってしまうだろう。  辺りを取り囲む視線から逃れ、僕は目に付いた路地に駆け込む。きらびやかな看板の目立つゲームセンターと、地味な鼠色した学習塾のビル(奇妙な取り合わせだ)の間にある小さな路地。  僕は自分の頬をつねる事にした。ありきたりだけれども、痛ければ狂人で、痛くなければ夢だということ。  ……痛くない。ほら、夢だった。  
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