無貌の保護者

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「……ッ! ……みッ!」  ――誰かが僕を呼んでいる。遠く遠く、まるで違う世界から聴こえてくるような声だ。僕はボロ雑巾のように疲弊しきった意識をかき集め、声の出どころを探り始めた。  こめかみが酷く痛む。いや、こめかみだけじゃなさそうだ。身体中に激痛が走る。これなら夢の方がマシじゃないか。 「君ッ! 意識が有るなら反応してくれよッ! おいッ」  ……誰だ? 聞き覚えがない声だ。若くはないが、年寄りでもない男性の声。酷く切羽詰まった声のように思える。僕は重い瞼をどうにか開く。  
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