零の矢~離別ノ詩~

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風はない。 白い吐息。 『彼』の冷たい感触。 少女はゆっくりと瞳を閉じた。 そして何かを決心したように瞳を開き、弓に矢を装填した。 力強く弓を引き天空へと矢を放つ。自らを照らす月を目掛けて。 天高く舞い上がった矢はやがては地の呪縛により少女のもとへ帰りくる。 少女は小さく微笑むと天に向かって両手を広げた。 まるで愛しい彼を抱きしめるように。 少しして少女の華奢な身体が崩れ落ちた。
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