壱の矢~終ノ歯車~

3/12
前へ
/44ページ
次へ
闇に目が慣れはじめる。 背負った弓を手に持ち、矢を静かに装填した。少女は茂みから目を逸らさない。逸らせなかった。 雲に隠れていた月がゆっくりとその姿を現す。 夏の暑さがこの緊迫した空気と相俟(あいま)って 少女の額から汗を滑らした。 茂みの中で何かが動く気配がした。少女の予想に反して『それ』はゆっくりと茂みから出てきた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加