レンズの向こう

高校2年生・冬

その日の父はすこぶる機嫌が悪かったのだと思う。

私の反抗的な瞳とぶつかった瞬間、父はおもむろにたばこを取り出し、ライターで火をつけた。
私に
「死ね」
と罵声を浴びせ、殴るだけでは気が済まなかったみたいだ。

そして何の躊躇もなくその火の付いたたばこを私の腕に押し当てた。

皮膚が焼かれる今まで体感した事ない激しい痛みに今まで一度も声を上げた事なかった私が思わず
「うっ…」
と声を上げてしまった。

父は私のうなり声にニヤリと笑みを浮かべると
ただ狂ったように笑いながら何度も何度も私の腕に赤く光るたばこを押し付けたのだった。

腕に出来る赤い斑点の様なやけどの跡と同時に心が焼け落ちる音がした。