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僕の名前は「高橋健太郎」
ある大手銀行に入社して三年になる。
入社した頃は期待と不安を胸に、毎日が充実していた。
今でも覚えている。
初めて定期を積んでいただいたお客様。
初めて営業目標を達成した6月。
仕事も軌道に乗り、僕は会社でも優秀の部類に入る人材になりつつあった。
そんなある日、些細な付き合いから、破滅の道をたどって行くことになった…
「ハァ~…今月はどうしよう」
高橋は悩んでいた。
今日は給料日。
普通なら少しぐらいの贅沢をして、また来月まで頑張ろうと自分にご褒美をあげたりするものだ。
しかし、高橋は給料のほとんどが「返済」へと消えていく。
「高橋!お疲れ!」
ニヤニヤしながら近づいてきたのは先輩の「五十嵐」
「…お疲れ様です」
五十嵐は高橋の肩を叩き、耳元で囁く。
「今月分、どうする?まともに払うか?それとも、勝負してみる?」
高橋は今にも泣きそうな表情で叫んだ。
「払います!!払いますよ!!勝負なんかしてたら、いつまでたっても返せませんよ!!!」
五十嵐は相変わらずニヤニヤした顔を変えることはなかった。
「そっか。それならいいけどよ。先月はお前中々調子が良かったからな。勝負されたら、今度は俺達が危ないかもしれないぜ」
高橋は涙をこらえ、その場から逃げるように走り出した。
「ちくしょう!!!」
そして、今月分の返済金をATMから下ろし、握りしめた。
五十嵐の元へ渋々戻り、五十嵐を含め三人の先輩達に五万円ずつ返済する。
「サンキュウ!高橋!まだまだ先は長いけど、お前は仕事が出来る人間だし、頑張れよ?」
五十嵐達は笑いながら、立ち去っていった。
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