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高橋もようやく落ち着きを取り戻し、涙を拭いた。
「あ、あの、よろしければお名前を教えて下さい!」
男は少し困った顔をしながら答えた。
「う~ん。まぁ金ちゃんでいいよ。お前は?」
「高橋です!高橋健太郎と言います」
「高橋か。それで、アンタ、何でそんなに金に困ってんだ?見た感じじゃ、いいとこの社員さんみたいだが」
高橋は酔った勢いもあり話始めた。
「僕は営業の仕事をしているんです。成績も良いほうで。でも、半年前からもうボロボロなんです…」
また泣き出しそうになる高橋を男はなだめた。
「泣くな泣くな?頼むから。そんで、何で優秀な高橋君はボロボロになったんだ?」
高橋はビールを一気に飲み干し、勢いよく話した。
「五十嵐ってヤツに誘われて、麻雀を打ったんです!アイツラ、嘘つきやがって!終わってみたら負けた金額が150万って言われて…」
高橋の話は途中途中が抜けていて、イマイチ理解出来なかった。
「なるほどな。騙されたわけだ。その負債を返済するのに金に困ってたわけだな」
男は高橋に同情することもなく、逆に興味がなくなっていた。
「それより、金さん。聞きたいことが一つだけあるんですが…」
「あん?何?」
男は少々めんどくさそうに答えた。
「確変終了後、何で5分待たせたんですか?まぁ結果、プレミアが出て引き戻せましたけど」
「あ~。そりゃ必然だ。偶然じゃねぇよ。お前、パチンコの原理って知ってるか?」
高橋は興味津々に男の話を聞きはじめた。
「例えば1/300って確率の台は300個のボールが入った箱から毎回1個を取り出し、また戻す、の繰り返しで、当たりのボールを引くと大当りなわけだよな?俺はその1個を引くのが得意なんだ」
わけがわからない。
あくまで確率で、大当りは運である。
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