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紅蓮が何処かへ行ってしまった後、アズー・タイトこと俺は道なりに旅していた。
ここは、ノースビレッジ大陸ウェストメルヴィルフォレストを両断するクインテッサマウンテンの中腹あたりにあるレイア村。
百余年前に浮かんだデッドアイランドが近くだからか、このウェストメルヴィルフォレストの辺りは闇属性の魔物が多い。
ただ、ここの最西端のスノーヴァレット岬よりかはマシになっていることは確かだ。
俺はそこから来たのだから。
理由はごく普通…と言っていいのかは判らないが、置いていかれたとしか言いようがない。紅蓮に連れて行かれ、そこで置いてけぼりを食らった。
だから俺は今まで行ったことのないノースビレッジ大陸の首都に向かおうかと、このクインテッサマウンテンを越えるやり方で来たのだ。
行き方は何通りかあったのだが、クインテッサマウンテンの向こう側の麓には【首都直通の電車】なるものがあるらしい。遠い昔に失われた、ロストテクノロジーとかいうやつだ。それに【乗って】行けば10日以上の工程を3日以内に収めることができるらしい。
この乗り物を聞いた時俺は諸手を上げて喜んだ。
なにせ雪の中をざくざくと歩かなくてもいいのだから。
この村では食料と、道中で切れてしまったロープと地図を手に入れた。
そして村を出ようとした時、一人の婆さんが声をかけてきた。
「旅のお方。そろそろ雪山さんば、荒れる頃ぞ。無理をせんと、ここで泊まっていきなされ」
「いや、今日中にさらに進まないとだめなんだ。ご好意は有り難いが俺は無理をしてでも行く。ありがとう、婆さん」
「そうか……なら、闇にだけは気をつけるのじゃぞ」
俺は判った、と手を振って村を出た。
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