クランクイン

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 事実は小説より奇なりとは、本当によく言ったものだと思う。  亡くなった兄が記憶を留めたまま転生した妹がいること以外、僕の人生は至って平凡。部活動に情熱を燃やし、恋心に悩まされる普通の高校生だった。  それが何だ。  神だとかヤマンバギャルの天使だとか宇宙人だとかが現れた上に、友人は半分妖怪で片思いの相手は重度のオカルトマニア。挙句の果てにはジャンボタニシの守護霊をつけられ、おまけにうちの兄兼妹の特別な事情が原因でこれからはオカルト染みた奴らが沢山現れるらしい。自分で言ってても意味わからん。  そんな非現実的なこと、つい最近まで信じてなどいなかった。僕が怖がりなのも信じなかった理由の一つだけど、幽霊はともかく妖怪やら宇宙人なら信じてない人は結構いるだろう。  まったくもって馬鹿馬鹿しい。あり得ないに決まってる。どのくらいあり得ないかというと、百万分の一の確率で当たる携帯電話があるとか、漕げば漕ぐほど大きな願い事を叶えてくれるママチャリがあるとか、そんな間抜けが考えそうな空想並にあり得ない。  でも実際目で見た以上、信じるしかない。悔しいけども。  タコ型UFOとの激闘から一ヶ月。季節は春を過ぎて、梅雨を背後にちらつかせた五月へと移り変わった。無事部員を確保し存続の危機を免れた我が映画製作部だったが、次なる試練が部の面々を襲う。  その手始めが恒例の伝染病『五月病』の襲来だっだ。
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