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「あら、さち子。その格好はどうしたの?」
奇っ怪な格好のさち子に母は不安げな表情を浮かべる。
しかしさち子はそれを無視し、手に持ったのこぎりで家の柱を切り始めた。
「きゃあ! さち子、どうしたの? お家が、お家が壊れてしまう」
しかしさち子は聞く耳を持たない。淡々と柱を切り続ける。
「お父さん、さち子が、さち子が! なんとかして下さい」
父は無言でうつむいたままだった。
「お父さん、お父さん、お家が! 壊れてしまゐます」
父は意を決した表情でさち子の前で土下座した。
「さち子、お父さんが悪かった!」
さち子は一旦手を止めると父を見下ろした。
「お父さん? アタシにはお父さんなど居ない」
「さち子……」
「アタシは……」
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