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淫らな朝露を啜る。
粘り気のある潮水。昨夜抱いた美しい女から、溢れ出す泉。
目覚めた女が呟いた。「ん…オシッコ」
このクソアマが。
詩的に迎える朝のムードが台無しだ。これだから女は。デリカシーのかけらがひとつもない。
勢い良く閉めるトイレのドアの音。
続いて勢い良く流れ出る飛沫の音。
売春婦も素人も一緒だ。若いだけしか価値のない下びた女。
こんな女を有り難がって抱いた自分に腹が立ち、これからもこんな女ばかりを抱き続けなければならない自分を呪った。
「…ごめんなさい。私潔癖なの」
そういって断ったのは、彼女一人だけだった。
真奈美。美しい真奈美。
俯いて見せる横顔。
伏せた睫毛は微かに震え。うっすら涙すら浮かべていた。両方の頬にある黒子。
私は彼女の意思を尊重した。
それきり連絡は途絶え、彼女を抱けることはなかった。
それから彼女のような女をずっと探し求めている。
だが彼女のような清らかさを持つ女は、誰一人としていなかった。当たり前だ。簡単に誘いに乗る女なんて、どうかしてる雌犬ばっかりだ。
どこにいるのだろう。
彼女のような、聖女は。
この汚らしくみすぼらしい女どもの、
相手をし続けるのはもう、うんざりだ。
彼女は聖域であり、聖母だ。
がさつな音を立てて、女が出てきた。
「小便と一緒に君も流されてくればよかったのに」
心中で呟いた。
馬鹿女は欠伸をした。ゴムで髪をくくろうとして、止めた。
頭髪がベッドのシーツに抜け落ちたのを、見逃さなかった。
「このまま起きようかと思ったけど…やっぱり二度寝してもいい?」
「…片付けろ」
「…え?」
「…片付けるんだよ。でないと汚れるだろうが。ゴミが」
ベッドに入ろうとした女を、力に任せて床に突き落とした。
「…いったい!何すんのよ!」女が叫んだ
「…掃除の時間だ」
私は片手に掃除機のホースを握って言った。
ホースで思い切り女を撲った。
悲鳴を上げた女の。
悲鳴が聞こえなくなるまで。
撲る。撲る。撲る。
やがて女が動かなくなり。
絨毯には血が広がっていた。
「…こんなに汚して。やはり君も最低な女だ」
塵をクローゼットに投げ入れた。
クローゼットは前に抱いた塵で山積みになっていた。
「どこにいるのだろう、彼女のような聖母は」
私はため息をつくと「良いことも悪いこともすべて許します。なぜなら私は穏やかな平和主義者だからです」と神に祈ると、クローゼットの扉を閉め、鍵をかけた。
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