ひと狩り行こうよ……

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  「……あれ? 熟成キノコって何処で採取出来るの? ―― キノコの採集ポイント全部回ったのに一個も見付かんないよぅッ……」 楕円形の機械を握り締め、中央に設けられた液晶画面に写し出される惨劇を涙目で見つめる女性が其処に居る。 美しい金髪と紅い瞳、メリハリの有るボディラインが特徴的なその人物の名前は――――フェイト・T・ハラオウン。 時空管理局が誇るエースの一人で戦えば負け無しとまで言われる程の実力を持つ魔導師。 役職は『執務官』――― 独自の判断で逮捕権を発動出来る刑事といえば解り易いかもしれない。  そんな彼女を四苦八苦……悪戦苦闘させているのは、何という事も無い ただのゲームだ。 「此所かな? ……いや、蜂の巣からキノコは出ないか。常識的に考えて」  ただのゲームなのだが、これが中々に難しい。とは彼女の弁。 しかし、何故そんな戯れを行っているのか? 執務官という役職柄長期任務などはざらで―― しいていえば其所に向かうまでの道中が任務期間の大半を占めている。 ……はっきり言ってかなり暇なのだ。オマケに次元航行艦という船で往き来するもんだから、暇潰しに外に出ることなど出来る筈もない。それもあって、艦のクルーの大半は暇を潰す為のアイテムなり手段なりを用意しているのだが… フェイトは今までその暇な時間を己の鍛練に注ぎ込んできた。 時には一人で、時には模擬戦相手と身体を動かしていたが――――ある事件を切っ掛けにそれが行えなくなってしまったのだ。 『訓練室が半壊しているんですが心当りありますか? 執務官』 『…………サア? ワカラナイヨー』 『はい、犯人確保ー。通信士さんハラオウン艦長に連絡入れてー』 『まっ、待って、話をきい――』 『――てなんかやりませんよ? 艦長と整備士達が犯人捕まえたら特別報酬くれるらしいんで』 『いやぁーーーーッ?!』 『まったく。……あれ程全力を出すなとおやっさんや整備士達が口を酸っぱくして言ってたのに』 『だっ、だって……』 『兎に角、テスタロッサ執務官は暫く訓練室使用禁止ですから。次の航海の暇を潰せる何かを見つけて来た方が良いですよ? ……発狂しない様に』 『ひ、人を戦闘狂みたいにッ!』 『……違うんですか?』 ぐぅの音も出なかった。
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