激闘 アオアシラ!

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  ■■■■■■ 丸太を思わせる豪腕が空気を切り裂く様に振り回される。 薙ぎ払う―――― という表現がしっくりくるだろう。 その動作には 人の持つ“技”と呼べるモノなど存在しない。 相手の次の行動など想定していない大振り。 回避されたら? 防がれたら? そんなモノなど一切感じられない稚拙な動き。 そう感じたヤツは二流も良いトコだ。 たしかに稚拙だし、次なんて想定していない。―― が、有り余る野生の象徴なのだ、それが。 人が捨て去ってしまった強さ。 純粋な『力』そのものなのだ。 小賢しい術などに頼らない強さ。一撃一撃ただ叩き込む。 相手が動かなくなるまで止めない自分が死ぬまで止めない。 勘違いしてはいけない。 あの有り余る野生の奔流に挑むのだ、人の野生を捨てて得た術が。 「――― クッ、踏み込めない」 ティアナは舌打ちしながら自身の分身をアオアシラから離して盾を構えさせた。 その間にポーチから回復薬を選び出し、隙を伺いながら使用する。 「(相手の動きが―― パターンが見えてこない)」 戦闘を開始して五分程経過しているが、未だにアオアシラの動きに合わせる事が出来ない。 「(本物の生き物みたい。これを作ったヤツは天才ね……)」  苛立つ心を押さえ込みながらも思考は冷静に、指は器用に操作を行う。 ―――― それを横目で見ていたフェイトは 驚きと素直な称賛を抱いていた。 やはり適応力というか……飲み込みが早いのだ、ティアナは。 やり始めたばかりの自分は(とはいってもフェイト自身は まだ自分は初心者の域から出ていないと思っているが…)―― ティアナ程上手く操作出来ていたかと問われたら間違いなく『NO』と答えるだろう。  
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