354人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
「俺と、別れて下さい。」
「本気で言うてんのか?」
黙って頷くと、徳井さんはそっと俺から離れて、俺の顔をじっと見据えた。
「…分かった。
ごめんな、」
真面目な顔して、分かっただなんてね?
初めから、そのつもりだったくせに。
謝罪の言葉なんていいから、悲しい顔の一つくらいしたらどうですか?
「…っ…ぅ、…」
ほら、こうやって涙流したりとかしてみれば、なんかそれっぽいでしょう?
悲しい別れ、みたいな。
徳井さんにとっては、そうじゃないと思うけど。
「若林、泣くなって…」
貴方も、そうなんですか?
「…笑ってや、いつもみたく。
笑った顔のが好きやで。」
別れ際には優しいふりするんですね。
「今まで、ありがとうな。」
ありきたりな言葉を残し、持ってきた鞄だけ持って出て行こうとする貴方。
「…待って、…っ…」
「…ん?」
「…徳井さんの、ものとか…まだ、いっぱい…」
「あぁ、みんなお前の好きにしてええよ。
使うなり、捨てるなり。」
最初のコメントを投稿しよう!