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また、勝手なことばかり。
出て行くのは構わないけど、全部持って行ってよ。
洋服も、歯ブラシも、何もかも、すべて、全部。
その一つ一つに残る、思い出も、全部。
貴方の影が映るものは、俺だって要らないよ。
「…またな。」
パタンと静かに閉まった扉。
ふと横の姿見鏡を見れば、醜い顔して泣く自分の姿が映っていた。
そう、貴方のものは何一つ要らないの。
だって…貴方は気づかなかった?
俺の首筋にも、『嘘』があるってこと。
ふっ、て嘲笑を浮かべると、何故だか涙が一気に溢れてきた。
いつからだろう。
貴方に裏切られて、同じことしてやろうって、
お互いに嘘付き合って、結局負けたのは自分だった。
本当に、馬鹿みたい。
意味もなくベランダに出て、キラキラ光る外の景色を眺めながら、次から次へと流れ出る涙を拭う。
でも、涙はまるで止まることを知らないみたいに、次から次へと溢れ出てきた。
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