隣の君に、泣かないで

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晩ご飯の買い物は、陸くんと2人で行くことになった。 私はひとりで大丈夫って言ったのだけど、陸くんが外も暗くて危ないからと譲らなかったのだ。 「それに男手があった方がいいって。俺、荷物持つからさ」 その言葉通り、買い物の荷物は陸くんが全て持ってくれた。 買い物袋を持つ彼と並んで歩くのは、何だかくすぐったい。 まるで新婚さんみたいだな。 スーパーで買い物をして帰る途中、近くのレンタルビデオ店がセールをしているのに気づいた。 全部半額で借りられるらしい。 せっかくだから借りて帰って、夜に見ようということになり、陸くんと寄り道をする。 2人であれやこれやと3本くらい選んだ。 陸くんはホラー映画が好きらしく、やたらおどろおどろしいDVDを手に取っていた。 ……夜にあれを見るの? 少し背筋が寒くなった。 だけど、こうしていると今夜は陸くんと一緒だと実感出来る。 ずっとずっと一緒にいられるのだと……。 「……晴香、何か手伝うよ」 「い、いい! 陸くんはソファーでくつろいでいて!」 「いや、でも何か悪いしさ」 「悪くない! わ、私がひとりで作りたいの。陸くんに、私の料理を食べてもらいたいの!」 「わ、わかった……」 家に戻ってきた私は、早速晩ご飯作りに取りかかった。 ……のはいいのだけれど、陸くんが気を使って手伝おうとしてくれるのだ。 気持ちは嬉しい。 だけど好きな人への手料理は、せめて初めてのときはひとりで作りたい。 ひとりで作った、私の料理を食べてもらいたいんだ。 そんな気持ちが伝わったのか、陸くんはやがて何も言わなくなった。 リビングでソファーに座って待っててくれている。 あまりに静かなので様子を見に行ったら、ウトウトと軽い眠りに落ちていた。 子供みたいな寝顔。 リラックスしてくれている。 キッチンからは、晩ご飯のいい匂いがしてきた。 本当に新婚さんみたいだ。
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