11623人が本棚に入れています
本棚に追加
晩ご飯の買い物は、陸くんと2人で行くことになった。
私はひとりで大丈夫って言ったのだけど、陸くんが外も暗くて危ないからと譲らなかったのだ。
「それに男手があった方がいいって。俺、荷物持つからさ」
その言葉通り、買い物の荷物は陸くんが全て持ってくれた。
買い物袋を持つ彼と並んで歩くのは、何だかくすぐったい。
まるで新婚さんみたいだな。
スーパーで買い物をして帰る途中、近くのレンタルビデオ店がセールをしているのに気づいた。
全部半額で借りられるらしい。
せっかくだから借りて帰って、夜に見ようということになり、陸くんと寄り道をする。
2人であれやこれやと3本くらい選んだ。
陸くんはホラー映画が好きらしく、やたらおどろおどろしいDVDを手に取っていた。
……夜にあれを見るの?
少し背筋が寒くなった。
だけど、こうしていると今夜は陸くんと一緒だと実感出来る。
ずっとずっと一緒にいられるのだと……。
「……晴香、何か手伝うよ」
「い、いい! 陸くんはソファーでくつろいでいて!」
「いや、でも何か悪いしさ」
「悪くない! わ、私がひとりで作りたいの。陸くんに、私の料理を食べてもらいたいの!」
「わ、わかった……」
家に戻ってきた私は、早速晩ご飯作りに取りかかった。
……のはいいのだけれど、陸くんが気を使って手伝おうとしてくれるのだ。
気持ちは嬉しい。
だけど好きな人への手料理は、せめて初めてのときはひとりで作りたい。
ひとりで作った、私の料理を食べてもらいたいんだ。
そんな気持ちが伝わったのか、陸くんはやがて何も言わなくなった。
リビングでソファーに座って待っててくれている。
あまりに静かなので様子を見に行ったら、ウトウトと軽い眠りに落ちていた。
子供みたいな寝顔。
リラックスしてくれている。
キッチンからは、晩ご飯のいい匂いがしてきた。
本当に新婚さんみたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!