11622人が本棚に入れています
本棚に追加
それから……。
私と陸くんは身体を重ねることなく、2人で私の部屋で眠ることにした。
ただし同じ布団には入らず、私はベッドで陸くんは床に布団を敷いて。
「り、陸くん……。私が床で寝るよ。お布団、寒くない?」
「だーめ。女の子を床で寝かせて、俺がベッドっておかしいだろ」
「でもー……」
「それに……晴香が普段使ってるベッドなんて、緊張して寝られねーよ」
「……り、陸くん……」
そんな風に言われたら、これ以上は何も言えない。
私は黙ってベッドに潜り込んだ。
オレンジの小さい明かりだけがともる、薄暗い部屋。
カチカチと目覚まし時計の秒針の音が響いている。
「……り、陸くん……。もう寝ちゃった?」
「いや、起きてるよ……」
「わ、私も……。ふふ、なかなか眠れないね……」
「そうだな」
布団に横になったまま、左手をかざす。
2つの指輪がぼんやりと目に映る。
「……り、陸くん……いつの間に指輪買ったの?」
「いつだっていいじゃん」
「で、でも……」
これ、結構高かったんじゃないのかな。
大丈夫だったのかな……。
あれ……
そういえば陸くん、よく休みの日に用事があるみたいだった。
それってバイトしてたってこと?
「陸く……」
聞こうかと思ったけど、やめた。
それは何だか胸に秘めた方がいいことな気がしたから。
「ん? なに、晴香?」
「……ううん。ねえ、何か話をしようよ」
「話? いいよ。なんか修学旅行みたいだな」
「そうだね……」
「じゃあ、あれかな。恐い話」
「えー……」
「冗談だよ。そんなに嫌がらなくてもいいだろ?」
「だってえ」
陸くんがクスクスと笑う気配がした。
「……そういえば晴香、中学のときの友達……『マヤちゃん』だっけ? それはどうなったの?」
「……うん。れ、連絡取れなかったの。マヤちゃん、携帯番号変えちゃってたみたい」
「え……?」
最初のコメントを投稿しよう!