隣の君に、泣かないで

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――――それから…… 私はお義父さん達に送られて家まで戻ってきた。 慌ただしかったからだろうか、陸くんとの別れの実感がない。 ただ胸にポッカリ穴が空いたような無気力さを感じた。 …………これからは、陸くんに会えない。 頭では理解しているものの、心で感じるのはまだまだ先になりそうだ。 家に帰った私は、フラフラと自分の部屋に入った。 ベッドに身を投げ出して、横たわる。 お母さんは買い物に行っているのか、とても静かだった。 しばらくは横になったまま、ぼんやりと部屋の壁を眺めていた。 ほんの3日前、私たちはここで一緒に過ごした。 そのときの気持ちは、今でもこんなにリアルなのに。 もう隣に陸くんはいないんだ。 「……はあ……」 息苦しさに寝返りをうつと、陸くんから受け取った紙袋が目に入った。 中には『ひとりぼっちの、れもん』 “……良かったら読んでみて” 陸くんの言葉がフワリと浮かぶ。 「……あとがき……か」 私はゆっくりと身体を起こすと、紙袋から絵本を取り出した。 そしてベッドに腰かけた姿勢でページをめくる。 一応、最初から読んでみた。 周りの果物と仲良くしたいのに、失敗ばかりのレモン。 やがてメロンとの出会いが、レモンを更に悩ませる。 メロンは、他に君にふさわしい場所があるとレモンに助言をした。 ここで上手くいかないとわかっていて頑張るのか それとも新しい出会いを探すのか レモンは考え、そして決意する。 「……はい、ここで白紙ねー」 全く記憶通りの展開に、ため息をつきながらページを繰った。 数ページ続く白紙。 そしてラストは、いきなりの“レモンは いつまでも しあわせにくらしました” 「……ああ、やっぱり意味がわからない」 あまりの超展開に内心あきれながら、陸くんに言われた通りに続きをめくった。 あとがきがあるなんて知らなかったな。 「……これか……」 本当に最後のページ。 そこにはレモン色の空と、桜の花びらが描かれていた。 そして、少し小さい横書きの文字。 絵本なのに漢字が使われている。 その内容は…………。
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