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しかし、俺も大野も、その男を知らない。
どこかで会ったということもない。
こんな山道で、しかもG県だ。
俺達は、S県なんだから、まず接点はないはずだ。
大野が男の身体を起こすと、男はゆっくり目を瞑り、消え入りそうな声で
「よかった」とつぶやいた。
「すげぇ、傷じゃん、熊にでも遭ったか?」と俺は茶化すように言った。
すると「リク、おまえ状況を考えろよ」と怒った。
大野は、こういう男だと思っていたくせに忘れて軽口を叩いてしまった。
男の呼吸が整うと
「ありがとう、ありがとう、助かった」と言った。
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