346人が本棚に入れています
本棚に追加
「愛莉も走る?たった十キロぐらい……」
「イヤだ」
全てを言い終える前に拒否した。
「十キロ『ぐらい』なんて表現出来るの、絶対に澄香だけだよ?」
「たった一万メートルだし」
「うわ、無いにやる気がさらに削がれた……」
そんな他愛のない、親友との会話……。
「ん……?」
ホームルーム前でクラスメート達が登校して来る中で、澄香はいつもと何かが違うことに気付いた。
「……愛莉、席が一つ多くない?」
三十二人クラスのはずが、席が一つ増えていた。
「いつも通りでしょ?」
「だって……!?」
言葉を紡げず、澄香は教室に入って来た生徒を視線だけで追った。
何食わぬ顔で、まるでそこが自分の席であるかのように座った生徒……。
それは、他ならぬ昨日の少年だった。
最初のコメントを投稿しよう!