第一話:出逢い

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「愛莉も走る?たった十キロぐらい……」 「イヤだ」 全てを言い終える前に拒否した。 「十キロ『ぐらい』なんて表現出来るの、絶対に澄香だけだよ?」 「たった一万メートルだし」 「うわ、無いにやる気がさらに削がれた……」 そんな他愛のない、親友との会話……。 「ん……?」 ホームルーム前でクラスメート達が登校して来る中で、澄香はいつもと何かが違うことに気付いた。 「……愛莉、席が一つ多くない?」 三十二人クラスのはずが、席が一つ増えていた。 「いつも通りでしょ?」 「だって……!?」 言葉を紡げず、澄香は教室に入って来た生徒を視線だけで追った。 何食わぬ顔で、まるでそこが自分の席であるかのように座った生徒……。 それは、他ならぬ昨日の少年だった。
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