CASE1『バトンメール』

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ナルと桃華がお好み焼き屋で会話をしていた同時刻。   「ーイジメ?そんな噂は聞いた事ないです。あの…もういいですか?」   「あぁ。ありがとう。わざわざ呼び止めてすまなかった」   長井は学生にそう告げて会釈して立ち去る。   「ふう…イジメについて何も出ないか」   1人溜め息混じりに声を上げた。   「成さん…向こうは何か進展あったのだろうか」   長井と成警部は喫茶店を出てから別々に聞き込みをしている。   その方が効率が良いからだ。   しかし長井が向かったのは自殺した生徒の自宅周辺での聞き込みだったが…   新しい情報や動きはない。   「しかしイジメられているような噂が全くないなら…イジメではない?」   自問自答するように声を出すが、答えは見えてこない。   長井は少し足を休める為、住宅地の中にある小さな公園に向かいベンチに腰掛けた。   砂場とブランコくらいしかないが、住宅地の中にあると言う事で散歩や子供連れの親子が目立つ。   それに公園を囲むように木々がそこそこ生い茂っている。   「さて…別視点からアプローチしてみるべきかね」   目を閉じてそんな事を考えながら、小さく声を上げた。   「…あの…」   「…ん?」   不意に声をかけられ閉じていたまぶたを開けた。   そこには…   30歳後半から40歳前半くらいの女性が立っていた。   買い物袋を持っている所を見ると、買い出しの帰りだろうか?  「どうかしましたか?」   長井は立ち上がって、そう声をかけた。   「もしかして警察の方ですか?最近この辺りでよく見かけますが…」   えぇと頷いて長井は自分の警察手帳を見せた。   「何かありましたか?」   「えぇ…実はここ1ヶ月くらい前から動物の死骸がこの公園でよく発見されて…気持ち悪くて、ね。何か調べてもらえないですかね?誰かの悪戯なら…悪質過ぎますし、子供も安心してここで遊ばせれないですから…」   長井は自分のメモ帳に要約して短く書いた。   「本当ですか?確かに悪戯なら悪質ですね…分かりました。署に戻ったら声かけてパトロールさせます」   「えぇ…お願いしますね」   そう言って女性は立ち去ろうとしたが…長井が呼び止める。   「ちなみに最近、死骸は見つかってないのですか?」   「多分…ですけど。最近は聞かないですよ」  
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