CASE1『バトンメール』

15/43
前へ
/43ページ
次へ
「お久しぶりです」   と、桃華が挨拶をする。   「ー俺達は特に用事って訳じゃないけど…なんとなく、ね」   「そうか。何か変わった事はなかったか?」   「変わった事?もしかして…」   俺の言葉を紡ぐように父さんが声を上げた。   「そうだ。自殺の件でだ。詳しくは話せないが、いろいろ聞き込みしている所だからな…お前達のような若い世代だからこそ知っている事や気付いた事はないか?」   守秘義務と言うヤツか?しかし自殺に関係ありそうな事は特に…   流石に現役の刑事に、バトンメールの事を話す訳にはいかない。   …非現実的すぎる。   「関係ありそうな事はないと思う」   そうかと残念そうに息を漏らす。   「長井さんもこの事件の調査しているのかな?」   俺がそう言うと、あぁと頷いて何かを思い出したように腕時計を見つめた。   「京水…悪いが父さんは待ち合わせしていたから、そろそろ行く」   父さんはそう言ってから、桃華に視線を移して…   「あまり遅くならないように。それと、京水とよろしくやってくれ」   と、足早に去って行く。   「ナルのおじさんは相変わらず心配性だねぇ。まぁ警察の人間だから尚更なのかな?」   「どうなんかね?それより…流石にバトンメールの事は言えないよな」   桃華に同意を求めたが…   「ん~どうなのかな?バトンメールに関わった人が何かしら何かが起こってる訳だけど…もしもよ?もしも…バトンメールを利用して誰かが何かを盗んだり壊したりしているなら…警察の出番じゃないかなぁ?」   「確かに。それが自殺の一因になった可能性もあるか…」   少し後悔した。 もう少し考えていれば良かったが…   「今度合った時にそれとなく伝えとく」   桃華はそうした方が良いかもねと声を出した。   ブーブーと桃華の着信音と共になり始めた。   「後輩から?」   俺がそう言うとちょっと待ってねと言い…携帯を確認している。   「ん~タイミングが悪いみたい」   「今日は厳しいって話し?」   えぇと桃華が呟く。   「確かに急だったし、また今度時間を作ってもらうか」   「そうだね。ちょっと待ってねぇ」   桃華は携帯でメールを打ち…   「送信っと…都合ついたらまたナルに連絡するよ」   了解と答えた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加