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『死にたくない…
死にたくない…
死にたくないー』
メモ帳に震えた字で何度も何度も繰り返し書かれた文字…
そしてー
『助けて助けて…なんで…あれは俺が悪かったけど…出来心…どうして…悪戯じゃないの?
誰か助けてよ』
こっちのメモ帳には、別の言葉が刻まれている。
それも所々、血で赤くなったメモ帳だ。
「長井…どう思う?これは本当に自殺なのか?」
「成警部…また読んでたんですね」
長井と呼ばれた灰色のスーツ姿の男性はそう言葉を返した。
「あぁ…どうにも腑に落ちない」
黒いスーツを身にまとった厳格そうな風貌の男性が長井に言う。
「…調べた結果、自殺でしたね。確かに普通じゃない気はしますが…」
ここは自殺した生徒の学校の近くの喫茶店。
古びた作りだが、料理や珈琲の味は安定している。
「普通じゃない自殺を行う心理は…長井、お前はどう考える?」
長井は珈琲を一口啜ってから答えた。
「普通じゃない死に方を行う理由は分かりませんが…何かに追い詰められた事が原因でしょう。じゃないと…あれは」
そう返して、思い出したのか…
長井の眉が少しだけ歪んだ。
「そうだな。普通の自殺って言うのもおかしいが…あの死に方は惨い」
自殺した生徒…
『室神しんご』
若干17歳で死を選んだ。
それも…
自分で何度も何度も腹部を包丁で刺して、だ。
「異常ですよね…遺書はまだ出てないみたいです」
「本当に自殺なのか?聞き込みをした結果…室神しんごは非常に怯えていたと聞いた。メモ帳に死にたくないと殴り書きもしてる人間が死を選ぶものかね?私には分からんな」
「…何かの恐怖から解放される為…いや、それでも…」
「長井…私は他にも疑問があるのだよ。メモ帳で書いていた『出来心』それに悪かったと…」
「誰かに脅かされていた?もしかして成警部は他殺だと?」
成警部は眉をひそめて…
「いや…他殺の線は低い。だが、明らかに何か裏はあると考えている」
「…自分もそう思います。それに最後の時に何故携帯電話を手に取ったのか?その疑問も気になります」
「そうだな…そろそろ聞き込みを再開するか」
長井は短く了解と声を上げて席を立った。
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