CASE1『バトンメール』

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刑事の2人が喫茶店を出た同時刻。   俺は出掛ける準備が完了し、桃華からさっき来たメールで今から1時間後に待ち合わせる事になった。   待ち合わせ場所は、近場の駅前だ。   駅周辺はいろいろとお店があるからと言う理由からだ。   「まだ少し時間あるか」   そう呟いて、居間に向かい母さんに声をかける。   「母さん…ちょっと桃華と出かけてくるわ」   「桃華ちゃんと?最近は遊びに来なくなったからたまには遊びに来るように伝えなさい」   と、台所で家事をやりながら声が上がった。   母さんと桃華は昔から仲がいいのだ。   「あぁ…伝えとく。あ、ついでになんか買ってくる物あったら買ってくるけど?」   「う~ん…特にないかな。あ、お父さんは最近仕事が忙しいみたいだから、お父さんに何か買ってきたら?」   「父さん…そうだな。適当に見てみるよ」   俺の父さんは現役の刑事だ。   事件が起きたら、家を留守にする事は多い。   …もしかしたら母校で起きた自殺を調べているのかもしれない。   ふと思った。   今度、顔合わせた時に話し聞いてみるか。   事件の事は流石に詳しくは話さないだろうが…俺の母校の事件だし、多少は話してくれるだろう。   居間の壁に掛かった丸い壁掛け時計に視線を移すと、そろそろ良い時間だ。   「母さん…ぼちぼち行ってくる」   そう声をかけて居間から玄関に向かった。   俺の背中に向けて、母さんが気をつけて行ってらっしゃいと声がかかった。   振り返らず、軽く手を振って答えて家を出た。
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