CASE1『バトンメール』

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待ち合わせ10分前。程よい時間だ。   駅前は平日の昼間と言う事もあって人はそんなに多くはない。   だが時期に会社のお昼休みで多少は増えるだろうが。   「さて…」   桃華が来るまで、携帯電話で軽く時間を潰そうと取り出した瞬間に声がかかった。   「ごめん。遅くなった…訳じゃないよね。着くの早くない?」  桃華は自分の腕時計に視線を移し、時間を確認しながら声を上げる。   「早くはないと思うけど。まぁ待ち合わせ10分前には来ていただけだよ」   そう言って笑ってみせた。   「相変わらず時間にキッチリした性格だねぇ。まぁいっか。とりあえずお店入る?まずはお昼からでしょ」   「そうだな…何かある?食べたい物とかさ」   駅から少し西に行った所に飲食店が多くある商店街がある。   俺達は会話をしながら、向かい始めた。   「特には。あ、そう言えば新しく店ができたらしいね。そこ行く?確か…お好み焼き屋だったかな」   「そうなんだ。お好み焼き…悪くないな。そこ行くか」   桃華が指を指してお店の方向を告げる。   そのお好み焼き屋までは歩いて5分程度の所にあるみたいだった。   「そう言えば、朝のメールってなんだったの?」   ふと思い出した疑問を問いかけた。   「あぁあれ?あれは、2~3年前に一時的に流行った『バトンメール』だよ。聞いた事ない?て言うかね…朝のメールは作りが少し違うけどね」   バトンメール? 聞いた事あるような、ないような…   「ー作りが違うってのは?」   「うん。本当は質問は消して回答だけを見せて…後で質問文を送って回答してもらうものなんだけど…ナルは知らなさそうだったし…このバトンメールってサイトの伝言板や日記機能を利用して第三者が見て、回覧履歴から回覧者にメールを送って参加するものなんだよね」   そう言う事か。 1人納得する。   「ん?でもサイト上で回覧から追っかけて行くものなら、誰か特定の人に送るって行為はないんじゃ?」   「そう。そこが今回新しくなったみたいなの。本来は知らない人同士で、名前通りにバトンを渡すように回すのだけど…」   「ーメールが来た人は自分で指定してメールを飛ばして回すようになったって事?」   「あ…店に着いちゃったね。続きはご飯後だね」   そうだなと、同意して店に入った。
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