ただ1つの歯車

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9月21日(木) 文化祭3日目 日本国の首都、かつて東京と呼ばれていた都市に一迅の風が流れた。 どうやらこの暑さは10月の中旬まで続くとの事で、とある少年の誕生日にまで暑さが引っ張られるらしい。 本当に忌々しいことだ。いつから日本は熱帯に区分されるようになってしまったのだろうか、誰かケッペンの気候区分を直してほしい。 この都市──魔技術都市の三分の一を占める新東京市にも、もちろんの事同様にアスファルトに照り返された夏日が差し込んでいた。 次世代魔術が生まれて、もう50年そして実用化され30年がたっている。 しかし、未だに地球の環境にとってプラスになるような次世代魔術は開発されてないとのニュースが最近されていた。 生命の、いや、世界の真理だろう。 結局科学は科学─そう、なのだろう。 「……………………………」 新東京市の第3区の大通りにて、とある黒髪の少年は沈痛な面もちで空を見上げていた。 制服のカッターシャツのボタンも全て外していて、中の黒色Tシャツが見えてしまっている。 ベルトですら学校指定の物ではなく、バックルがついたようなベルトだ。 しかし学校では一度たりとも注意された事はない。要はそういう規則が緩めの学校に通っているのだ。 「………っ……………………」 さてさて、なぜこの『文化祭3日目で幼なじみとデートをする』などという恵まれたポジションにありながらも、ボケボケな感じで空をみているかというと。 「………来ないね……………うん…」 待ち合わせから1時間も過ぎているのに関わらず、待ち人が一向に来る気配が無いからである。
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