其の後

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「俺はお祖母ちゃんに貰ったんだよね。そのお祖母ちゃんは曾祖母ちゃんに貰ったって。曾祖母ちゃんがお祖母ちゃんに渡す時、霊感が強い人が持てば何か見れるかもしれない。私には何も見られなかったけど、ずっと守って貰っていた。憎いほど大切な指輪だった……って言ってたって聞いてる。だから勝手に魔除けなのかなーと思って。俺がこの指輪貰った理由も、霊感強いからだったし。会ったことないけど曾祖母ちゃん変わった人みたいだったから良く分かんないや」 良く分からないけど何やら効力のありそうな指輪を、私に渡さないで欲しい。 しかも箱や袋に入れて大切に扱われていた訳じゃなく、ひょいと裸のまま手渡しだったのだ。 私が安っぽいと思ってしまったのはそのせいだ。 「その曾祖母ちゃんの名前、分かる?」 私はすごく真剣な表情と、声音で言った。 まだ私が何を言いたいのか分からない冬吾は、頭に?マークを浮かべたような顔で、私と指輪を交互に見ながら曾祖母ちゃんの名前を思い出す。 そして、はっと驚きの表情を浮かべると、疑惑と確信を持った目で口を開いた。 「か、一恵さん!?」 まさかと言う思いと、きっとそうに違いないという相反する思い。 冬吾の表情はそう言っていた。その気持ちは私も分かる。 この指輪を見つけた時、そんな偶然あるのかと困惑し、そして多くの出来事は必然だったのだと納得したのだ。 引越しのため荷物をまとめていた私は、机の引き出しで見つけた。 蓮が、一恵さんにあげた指輪を。 「そう。これは一恵さんの指輪……霊感のない私が蓮と出会えたのも、夢を最後まで見られたのも、そして何より綺麗な姿のままの蓮とお別れできたのも、この指輪が私の手元にあったおかげだと思う」 最後に一恵さんがくれた奇跡だ。
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