第零章 大統領選出計画

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「当然、審議会に目を付けられて下界活動は終了。 これ以後は、皆さん知っての通りで下界の活動は廃止になったと言うワケだ」 グロウスが飴を追加で口に放り投げる。 「言いたいことがまるで分からんな。 こんなところで、無駄な時間を過ごしてはいられん」 アヴァロンは席を立ち、扉へ向かおうとする。 「ちなみに現在、阿部氏もといアルバはこの悪魔界で焼肉専門店【満福亭】を経営している。 今も大繁盛の有名店になってるの、アヴァロンさん、アンタはご存知?」 「……さあ、知らんな。 それがどうしたというのだ」 「リスクってのは小さいほど確かに安全性はあるけど、ただそれだけ」 その後ろ姿を見つめ、グロウスは続ける。 「これからの将来を考える上で必要なのは、保持ではなくて革命。 現状の体制を一新し、新たな未来への基盤作りを行うことこそ、最も優先すべきことだ」 扉に手を掛けていたアヴァロンの動きが止まり、ゆっくりと振り返る。 「……ほう。 魔界統政保安局の魔局長ともあろう者が、革命を口にするとは。 とても正気の沙汰とは思えんな」 「大きなリスクがあったからこそ、得られたものも相応だった。 今は当時と違って危機管理体制がしっかりと整ってる。 そうだよな、マシュフォワール魔局長」 グロウスの問いに、マシュフォワールは不機嫌そうに頷く。 過去にアルバのことで散々に振り回された記憶が、甦ってきているのだろう。 「リスクには価値がある。 その規模によって影響力も変化するし、得られるものも変わってくる。 今回の選出方法の理由は、そうしたことが狙いだ」 「それは、下界での活動という大きなリスクを再び背負うことで、魔界の発展に繋げていくという認識でよろしいのかしら?」 副大統領と保安局魔局長のやり取りを、静かに聞いていたキアラが口を開く。
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