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「話が一旦終わったみたいだなー」
マシュフォワールの対角線上、机の端で寝そべっていた青年がゆっくりと起き上がって伸びをする。
「アレやれば、良くない?」
脇に置いていた透明なグラスを引き寄せ、パチンと指を鳴らす。
空のグラスの底から赤い液体が湧き上がり、八分目の位置に止まったところで、青年はグラスを口元に寄せた。
「アレとは?」
マシュフォワールが顔を上げ、怪訝な顔を青年に向ける。
「俺がアレって言ったらアレだよ、マシュフォワール。
アンタならだいたい察しがつくだろー?」
銀縁の眼鏡を白衣のポケットから取り出し、リクライニングチェアにもたれ掛かる青年。
ゆったりとした姿勢で、笑みを浮かべている。
「ってわけで、俺から皆さんに提案がありまーす。
ブラックボードの方を御覧になってくださーい」
パチンと指が鳴ると同時に、室内が暗転する。
「何の余興だ、これは」
「こういう演出の方がワクワクするっしょ」
青年が再び指を鳴らし、明転する。
一同の目の先には【大統領選出計画】の文字が金色に輝いていた。
「……グロウス、本気じゃあるまいな?」
「魔界統政保安局・魔局長として、これが最も適切な措置であると判断したんでね。
さ、ご賛同される方は挙手して下さーい」
グロウスは再び白衣のポケットに手を突っ込み、小ぶりな砂時計を目の前に置いた。
銀色に光る砂は、まるで緩やかに流れる滝の如く容器内を徐々に満たしていく。
「この混乱した情勢の中、何を馬鹿な!」
「混乱してる今だからこそ、やる意味があるんだって。
こんなとこで何度も会議開く方が、そもそも時間のムダでしょうよ」
「物事には段取りというものがあってだなーー」
マシュフォワールが反論しかけた時、彼の真向かいに座っていた人物の手が挙がった。
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