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「ちょっとよろしいかしら」
芯の通った声で、細い腕を直角に伸ばす女性。
ネイビーのパンツスーツに、黒縁の眼鏡を掛け、背筋はピンと伸びている。
「なんだ、キアラ。
話の途中に割り込んでくるとは!」
「すみません、どうしても気になることがあったものですから」
勢いのある怒声に屈せず、キアラは返答する。
都市管理及び魔政管理局・魔局長キアラ。
凛とした佇まいが各局内で話題となり人気を博しているが、当の本人はまるで気にしていない。
「ちっ、どいつもこいつも……!」
マシュフォワールは忌々しく舌打ちをし、スーツの内ポケットから四角い箱を取り出した。
BlackStarという、下界で有名な煙草の銘柄らしい。
一本を口にくわえ、人差し指の先から炎を出して煙を吹かした。
「グロウス、候補者は決めているのですか?」
「あー、もちろんね。
すでに各名家の当主にも伝達済み、データも持参してきてあるんだわ、これがね」
砂時計を横に倒し、グロウスはブラックボードの前へと移動する。
「まぁ、これ見てちょ」
肩でも叩くように、トンと軽くボードに触れるグロウス。
七つの姿と、その脇に幾つかの項目が浮かび上がってきた。
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