川崎事件

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医師の予想に反して、注射の効果も虚しく、洗面器を抱えたまま一晩中まんじりも出来ず過ごす事になった。 夜が明け翌日になっても状態は変わらなかった。 再び病院を訪れプリンペランなる注射を受け、やっと吐き気が治ったのだった。 吐き気の原因は何なのか、結局分からずじまいだったけど具合が良くなれば、それで良かった。 その日は法事で、本来なら私も出席するはずだったのだが、前日一睡もしてなかった私は疲れ切っていて、母だけが出かけて行った。目覚めてみると時間は既に夕刻を廻っていた。嘔吐して水分の足りなくなっていた私の体は、喉の渇きの為苺をたらふく食い、従姉の家族に散々迷惑をかけたあげくお土産まで貰って、翌日帰路に着いたのだった。全く、何の為に川崎まで行ったのか分からない。 家に着いて、父にはこの事は黙っている事にした。真実を話したら迷惑をかけた私のふがいなさに怒りん坊の父は、何を言いだすか分からなかったからだ。父の性格をよく知っている従姉も話を合わせてくれた。
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