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私の勤務していた会社は、まだ週休2日という体制をとっておらず、隔週土曜日が休みで、5月20日の土曜日は通常勤務の日だった。
バブル真只中だった当時、景気は絶好調で、私は某塗料メーカーの卸に勤務していたのだが、連日、退社時間の5時半を過ぎても注文が山のように入ってくる。
その事務処理だけでも大変だったが、受け付け業務以外にコンピュータオペレータの仕事もしていた私は、毎日の売り上げ処理やバックアップの作業を完了させないと帰宅する事が出来なかった。
営業の社員が次々と帰社し、業務を終了して帰り支度を始めても、コンピュータの作業が終わらないと私は帰る事が出来ないのだった。
この日もそうだった。
何となく気分が悪いなと思い始めたのが午後6時頃。
8時の声を聞く頃にはトイレに通いながら仕事をした。
残業をしていた社員がトイレの外から声を掛けてくる。
「大丈夫?無理しないでもう帰ったら?」
私は答えた。
「あ、大丈夫ですから。」
実際トイレに行っても、唾液ばかりが出てくるだけで本当に吐いている訳ではなかった。
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