メニエール氏症候群

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日曜、午後の医療センターは思った程患者がおらず、閑散とした雰囲気をたたえている。 程なく名前を呼ばれ診察室に入った。 初老の医師が待ち構えていた。 この時も吐き気を堪えるので精一杯だった私は、問診を母に任せていた。 どうしようもなかった。 口を開こうとすれば、込み上げてくる吐き気で胃が逆流してくるのだ。 1月の川崎事件の事、昨日から吐き気があり止まらない事を母が説明する。 内科医らしいその医師は、 「ふむ。」 と言い、私の目の前にひとさし指を突き立てた。 「この指を目で追ってごらん。」 医師はゆっくり左右に指を動かした。 言われるまま指を目で追う。 吐き気が突き上げてくる。ハンカチで口を押さえ、目は涙で一杯になった。 「これはアレルギーじゃないね。ほら目眩がして吐き気が起こるんだよ。メニエール氏症候群だと思う。女性に多い病気なんだ。今日は取り敢えず点滴をしましょう。明日になったら、かかりつけの病院へ行くように。」 医師の言葉を信じて 『そうかメニエール氏症候群と言うのか。まぁ吐き気が治まってくれればいいや。』 と納得した。初めて聞く病名だったが、そう大変な病気とも思われなかった。2時間くらいの時間をかけて点滴を受け、家に帰った。た。
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