478人が本棚に入れています
本棚に追加
家からM下医院まで車で30分の道のりである。
父の運転で9時近くに到着した。
身をよじって吐き気と格闘している私を診て院長先生は、
「うーむ。今夜入院して下さい。色々検査してみましょう。」
そして、それが悪夢の闘病生活の始まりになるなんて、その時の私はつゆほども思わなかった。
直ぐ様、入院手続きをとり、看護師さんに6人部屋に案内された。
病気の診断もつかぬ前に何やら点滴をされる。
栄養、水分補給と吐き気止めの為か?
苦しむ私の背中を、母がどんどんと叩く。
先程の看護師さんがポータブルトイレを持って来た。
「おトイレに行きたくなったら、これ使って下さいね。」
とベッド脇に置いて行く。冗談じゃなかった。個室ならまだしも、こんな大部屋で、他の人が居る所で用を足せというのか。
もちろん歩くのも辛い、私への配慮なのだろう。しかし私は意地でもそのポータブルトイレを使う事はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!