呑気な入院生活

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すこし元気になると現金なもので、あれだけ世話になった病院にさっさとおさらばして、元の生活に戻りたいと思う様になる。 うれしかったはずの点滴も、優しく扱われる事も、いい加減うんざりし始めて来た。 回診の時に先生をつかまえては、自分の回復ぶりをアピールする。 「先生、ご飯もほとんど食べられる様になりました!」 2週間が過ぎて、先生から退院の許可が出た。叔父が母と迎えに来た。 「何か食べて行く?」 の問いに直ぐ様答える。 「うん。ラーメンがいい!」 何を一番食べたいか、という答えがラーメンとは我ながら食生活の貧困さに情けなくなったが、病院食以外なら何でも良かった。 家に帰る途中で小さなラーメン屋に寄って、醤油ラーメンを食べた。 あれだけ吐き気かあった2週間前が嘘のようだった。 やっと家に着く。2週間ぶりの我が家は何も変わらず私を迎えてくれた。5匹居る愛犬達は大騒ぎだ。 夕方になって友人に退院した事を連絡。すぐ家に飛んで来てくれた。 私を見て一言。 「わぁ痩せちゃったね。」 言われる迄は気が付いて居ない事だった。45キロあった体重は40キロになっていた。 ワンピースの開いた胸元から鎖骨が露になっている。まぁいいや。食欲も戻ったのだから少しずつ戻していけばいいのだ。 あくまでも「呑気」な私だった。
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