川崎事件

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診察室には30代半ばの医師と、私と同年令(20代半ば)位の看護師が一人居た。 口さえロクにきけなくなっていた私の代わりに、母が説明している。 「ええ、お昼に卵を食べてから具合悪くなった様何です。以前卵にあたった事がありまして。」 当直の若い医師は、母の言葉を聞いてまことしやかに答えていた。 「ふむ、アレルギーだね。ほら皮膚が少しガサガサしている。アトピーもある様だね。」 私は心の中で思った。 『ガサついてるって…気持ち悪くて鳥肌が立ってるんだって。アトピーなんて言われた事ないよ。全然痒くないし。』 抗議しようと思ったが、この病院にずっとかかる訳じゃないし、今は兎に角この吐き気さえ治して貰えばいいのだ。 どっちみち話す気力も無いので黙っている事にした。件の医師は 「プリンペランを。」 等と看護師に吐き気止めの静注を指示した。看護師が手際良く私に注射を施す。 「これで収まると思いますが、吐き気が止まらないようでしたら明日又来て下さい。」 との医師の言葉を受け、私たちは病院を後にした。
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