めくりめく

16/24
前へ
/305ページ
次へ
初回、マウンドに上がったのは東海大佐上の2年生エース橘翔太。 数球のピッチング練習ののちバッターが打席へと向かいプレイボールのコールがかかった。 打席に立つのは俊足の片岡。 左でオープン気味に構える。 そして橘が一球目を投じる。 しなる右腕から投げられたボールは一直線に宇田川のミットに突き刺さる。 ドパアンと重く低い音がミットを鳴らした── 「──あの球かなり速そうだな」 橘の投球を見た神岡が感想を漏らす。 「……」 1、2回戦とはまさに異質のピッチングに皆口を閉ざしてしまう── 橘は片岡を三球三振に打ち取ると続く二番山内、三番高浜も三振に打ち取るピッチングを見せた。 マウンドの橘はまるで見下しているかのような表情をしていた。 「お前その表情やめろ。相手に失礼だぞ」 ベンチに戻る橘に女房役宇田川が声をかける。 「別にいいじゃん俺は打たれないし!」 にっと笑い返答する橘に宇田川は深くため息を吐いた。
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

393人が本棚に入れています
本棚に追加