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初回、マウンドに上がったのは東海大佐上の2年生エース橘翔太。
数球のピッチング練習ののちバッターが打席へと向かいプレイボールのコールがかかった。
打席に立つのは俊足の片岡。
左でオープン気味に構える。
そして橘が一球目を投じる。
しなる右腕から投げられたボールは一直線に宇田川のミットに突き刺さる。
ドパアンと重く低い音がミットを鳴らした──
「──あの球かなり速そうだな」
橘の投球を見た神岡が感想を漏らす。
「……」
1、2回戦とはまさに異質のピッチングに皆口を閉ざしてしまう──
橘は片岡を三球三振に打ち取ると続く二番山内、三番高浜も三振に打ち取るピッチングを見せた。
マウンドの橘はまるで見下しているかのような表情をしていた。
「お前その表情やめろ。相手に失礼だぞ」
ベンチに戻る橘に女房役宇田川が声をかける。
「別にいいじゃん俺は打たれないし!」
にっと笑い返答する橘に宇田川は深くため息を吐いた。
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