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「──彼のバッティングはよく見ておいたほうがいいよ」
荻原が腕を組ながらそう助言した。
「すごいバッターなんですか?」
「ああ。高校通算59本塁打打っているからね──」
まさにその初球だった
田中が投じたインローへのストレートは松田のバットに吸い込まれるかのように真芯に当たり、打球はライト方向へと飛んでいった。
しかし打球はわずかに切れファウルとなった。
(危なっ……一球足りとも油断できないな……)
そしてカウントは平行カウントとなり五球目田中は決め球のカーブを投げた──
快音が響く。ピッチャーの頭を越える、そう思った打球だったが、ボールは田中のミットに入っていた。
身長が高いゆえの特権……田中は長いリーチを利用してセンターへ抜けようかという打球を掴み取ったのだ。
(ちっそう簡単にいかねえか……)
松田はマウンドの田中を睨み付けながらベンチに戻っていった。
初回は東海大佐上がランナーを出すも結局得点には結び付かず静かな立ち上がりとなった。
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