夏の始まり

5/23
前へ
/305ページ
次へ
一方その頃抽選会場では── 「うわあ~すごい人~!」 「神奈川は激戦区だからね。全部で112校あるよ」 「そんなにあるんですか!?」 「大阪とかもかなり多いよ。あそこにいるのは横覇魔高校だよ」 そう言って前の方に座る集団の方を指差した。 「見るからに強そうですね」 「4年連続で甲子園に行ってるからね。去年は決勝で負けたけど」 「えっ? どこにですか?」 「横覇魔早戸っていう無名校なんだけど、あれよあれよと勝ち進んで、決勝まで上り詰めたんだよ。そして決勝は激しい死闘の末、早戸がサヨナラスクイズで甲子園行きを決めたんだ」 「へぇ~まさかの結果だったんですね。野球は何が起こるか分かりませんね……」 「雑誌も決勝前に横覇魔早くも5連覇確実か!? とか書いてあったしね。誰もが行くと思っていたよ」 「じゃああたしらも横覇魔倒して甲子園行っちゃいましょー!」 いきなり大声を張り上げる松山に会場内はざわつき始めた。 それはもちろん横覇魔の面々にも聞こえていた。 ピリピリとしたムードが会場を包み込んだ。
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

393人が本棚に入れています
本棚に追加